日本の医療制度や介護制度は、今後も維持されるのか。病院に入院することができなくなったら、終末期をどのように過ごせばいいのか。家族に何を遺せるのか。

日本で暮らす多くの方は、これからの人生に、さまざまな不安を抱えているのではないでしょうか。今後、私たちが直面する問題と、その先にある問題にどう向き合うのかを考えます。。


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多死社会と少子高齢化によって変わる社会構造

現在の日本が直面している多死社会と少子高齢化は、今後、さまざまな問題を引き起こすと予想されています。

まずは、医療の問題です。高齢化によって、療養や看取りが必要な人が増えていけば、医療需要が増加します。

その結果、病院で最期を迎えるという、今なら当たり前のことができなくなるかもしれません。病院や施設だけでなく、在宅医療の充実も喫緊の課題です。

また、若年層よりも高齢層が増えれば、医療の現場でも、介護の現場でも、「老老医療」「老老介護」が深刻化し、人手不足に悩まされることになるでしょう。

社会保険料を納め、高齢層を支えているのは、現役の働き盛り世代です。この層が減少すれば、一人あたりの負担が増え、いずれは制度そのものが揺らぐことになるでしょう。

2012年は、65歳以上1人を現役世代2.4人で支える「騎馬戦型」と呼ばれる時代でした。

しかし、2050年には、65歳以上1人を現役世代1.2人で支えなければならなくなる「肩車型」と呼ばれる時代の到来が予想されています(厚生労働省「今後の高齢者人口の見通しについて」より)。

そうなれば、現役世代の負担はさらに膨らみ、社会保障制度に影響を及ぼすかもしれません。


経済的な問題によるエンディングへの不安

これから起こりうる社会構造の変化に対する予想は、経済的な不安も増大させます。

「年金が減少して生活が苦しくなるのではないか」「満足な医療が受けられずに安心して死を迎えることができないのではないか」という、直近の生活に対する危機感だけでなく、「死後不安」にもつながります。

「頼る人がいない、遺産もない中で、誰が自分を送ってくれるのか」「お墓を買う余裕はないが、死後はどこに行くことになるのか」と、自分がいなくなったあとのことを考えて不安を募らせる方は少なくありません。

こうした不安を解消するためには、早いうちに正面から課題と向き合い、しっかり考えた上で自分なりの答えを出しておくことが大切です。


タブー視せずに、自身と家族のエンディングと向き合う

これまでの日本では、「死」について語ることは、縁起が悪いとしてタブー視されてきました。

「死への準備は、より良く生きることにつながる」と積極的に死について語る人が増えたのは、ごく最近のことです。

今では「終活」という言葉も浸透し、生前に夫婦で話し合って墓を購入したり、葬儀の生前予約をしたりと、元気なうちに自身のエンディングについて考え、支度することが一般的になりつつあります。

エンディングへの漠然とした不安を解消し、毎日をより良く生きるために、今私たちができることは、タブー視することなく、自身のことはもちろん、家族の「死」についても考え、話し合うことではないでしょうか。

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