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逝去の前日までドラマの打ち合わせをしていた渡瀬恒彦さん
俳優の渡瀬恒彦さんが2017年3月14日、多臓器不全により都内の病院で亡くなりました。72歳でした。
渡瀬さんが体調不良を訴えるようになったのは、2015年秋のこと。検査の結果、胆のうに腫瘍が見つかり、5か月間の休養をとって抗がん剤や放射線による治療を行っていました。
2016年の春に復帰した後も、治療を続けながら『警視庁捜査一課9係 シーズン11』や『おみやさん スペシャル2』に主演。2017年4月から放送される『警視庁捜査一課9係 シーズン12』への出演も決定し、3月からの撮影に備えていた矢先の逝去でした。
渡瀬さんの演技にかける情熱はすさまじく、2017年2月に再入院した後も、病と闘いながら台本を読み込み、亡くなる前日までドラマの打ち合わせをしていたそうです。
渡瀬恒彦さんが「マッドドッグ」と呼ばれた理由
俳優として、輝かしい実績を残した渡瀬恒彦さんですが、もともとは俳優志望ではなく、電通PRセンターに勤務していました。
その当時、兄の渡哲也さんは俳優と活躍していました。そこで、東映の岡田茂社長が弟の渡瀬さんにも声をかけ、口説き落としたそうです。
1970年に公開された映画『殺し屋人別帳』でデビューした渡瀬さん。その後、『仁義なき戦い』シリーズや『狂った野獣』など、数々のやくざ映画やアクション映画に出演。
1978年に出演した映画『赤穂城断絶』と『事件』の演技が高く評価され、ブルーリボン賞助演男優賞などを受賞し、実力派俳優としての地位を固めていきました。
その一方で、渡瀬さんはアクション映画では常に体を張って、危険なシーンも自身で演じていました。
1976年の『実録外伝 大阪電撃作戦』では車に引き摺られ、『狂った野獣』や『暴走パニック 大激突』ではカーアクションシーンで自ら運転しています。
また、1977年の『北陸代理戦争』では、転倒したジープの下敷きに。片足を失いかけるほどの大怪我を負っています。
渡瀬さんのあまりに無茶な体当たり演技に、「マッドドッグ」というあだ名がつけられるほどでした。
兄の渡哲也さんや多くの俳優仲間から追悼のコメントが
渡瀬恒彦さんの逝去に、兄の渡哲也さんは、所属事務所を通じてコメントを発表しました。
「当初よりステージ4、余命1年の告知を受けておりましたので、今日の日が来る覚悟はしておりましたものの、弟を失いましたこの喪失感は何とも言葉になりません。幼少期より今日に到るまでの二人の生い立や、同じ俳優として過した日々が思い返され、その情景が断ち切れず辛さが募るばかりです」
映画『事件』などで共演した大竹しのぶさんは、「渡瀬さんとなら、何をやっても受け止めてくれて、何をされても受け止める信頼感がありました。もう一度、緊張感ある芝居を2人でしたかった。そして、頭をなでられて、『しのぶは最高だな』と言われたかった。(中略)どうぞゆっくりお休みください。私たちは、あなたの素敵な笑顔を決して忘れないでしょう」と所属事務所を通じて、追悼の意を表しました。
映画『首都消失』などで共演した名取裕子さんは、「ことしの桜も見ないうちに旅立たれてしまうなんて…。風を見るような、切なく、あたたかいまなざしが目に浮かんで、涙があふれてきます」と、所属事務所を通じて悲痛な想いを明かしました。
映画『釣りキチ三平』で共演した土屋太鳳さんは自身のInstagramで「私にとっていろいろな意味でスタート地点となった映画『釣りキチ三平』でお世話になった渡瀬恒彦さんが、この世を旅立たれてしまいました。お伝えしたい感謝がいっぱいあったのに…『今』を大切にしようとあんなに心に決めたのに」と、想いをつづりました。
葬儀は、渡瀬恒彦さんの身内や俳優仲間だけの密葬で
渡瀬恒彦さんの葬儀は2017年3月17日、都内の斎場で行われました。派手なことを好まなかったという渡瀬さんの希望で、兄の渡哲也さんなど家族、親族のほか、親交のあった俳優の片桐竜次さん、不破万作さん、中西良太さんらが参列する密葬で行われました。
葬儀では、柩に家族からの手紙や家族旅行の写真が手向けられ、植物を育てることが好きだった渡瀬さんのために、祭壇には渡瀬さんが好きだったオンジュームの花が飾られました。遺影には、妻のい保さんの誕生日に撮影した写真が使われたそうです。
渡瀬さんを見送った葬儀のスタイルは、密葬と呼ばれるものです。家族や親族、近しい友人で葬儀を行い、後日改めて参列できなかった方が偲べるようにお別れ会を行います。多くのファンがお別れを望む有名人の場合に行われる、一般的な葬儀のスタイルといえます。
一方で、淡路恵子さんの葬儀のように、ファンの方も参列できるスペースを用意し、お別れ会を行わない場合もあります。
『警視庁捜査一課9係』シリーズのほか、『十津川警部』や『おみやさん』など、数々の人気シリーズに出演してきた渡瀬さん。お別れ会の予定はまだ決まっていませんが、行われるとなれば、多くのファンが参列することは間違いないでしょう。
ご冥福をお祈りいたします。