故人の遺産を、残された家族が受け継ぐことを遺産相続といいます。遺産をどのような順序で配分されるのかは民法で定められています。しかし、家族構成や相続する対象によって複雑になるケースもあるため、どうしても問題が生じやすい分野です。
今回は、遺産相続を考える上で重要なポイントや注意点について紹介します。
遺産相続は、資産だけでなく負債も受け継ぐ
遺産相続とは、故人が保有していた財産について、プラスの財産「資産」だけでなく、借金などマイナスの財産「負債」も含めて残された家族が受け継ぐことをいいます。
テレビドラマや小説などのイメージから、膨大な財産を持っている方だけ起こるように思われがちですが、金額の多い少ないは関係ありません。
相続対象は金銭や土地などに限らず、権利や義務にも及びます。借金の保証人の立場や、未払いの税金なども引き継いでしまうのです。
故人に資産も負債もあり、資産を相続しても負債を補うことが難しい場合、相続人には2通りの手段があります。
ひとつは、資産も負債も、相続の一切を放棄する相続放棄です。もうひとつは、資産の範囲でのみ負債を引き継ぐ限定承認です。限定承認は、資産に比べて負債が明らかに多い場合や、まだ判明していない借金などが残っている可能性がある場合の手段として取られます。
相続税は、資産があってもかかる方と、かからない方がいる
相続は、人が亡くなれば自動的に発生します。遺産相続で、亡くなった人を被相続人と呼び、遺産を受け継ぐ人を相続人と呼びます。
遺産を受け継ぐ相続人すべてに、相続税がかかるわけではありません。資産の総額が控除額を下回った場合は、相続税がかからないからです。
それでは、控除額はどのようにして決まるのでしょうか。それは、下記の計算式で決まります。
基礎控除額3,000万円+相続人の人数×600万円
例えば、相続人が3人いた場合の控除額は以下の金額になります。
基礎控除3,000万円+3人×600万円=4,800万円
相続人が3人いた場合、資産の合計が4,800万円までであれば、相続税はかかりません。
遺産相続の対象となる資産は、以下になります。
1. 現預金…現金、預金、貯金
2. 有価証券類…国債、地方債、株式、債券、投資信託、ゴルフ会員権など
3. 不動産…自宅の土地・建物、マンション、賃貸不動産、農地・山林など
4. 借地・借家…借地権・借家権
5. 生命保険…一人当たり500万円までは非課税
6. その他…自動車、書画・骨董品、特許権、著作権など
相続は、故人が逝去した時点でスタートする
相続は、民法882条によって被相続人の死亡が起点となることが定められているため、相続人の意思にかかわらず、被相続人の死亡が確認された瞬間から相続がスタートします。それでは具体的な流れを確認しておきましょう。
1. 被相続人の死亡から7日以内に死亡届を提出します。
2. 3ヵ月以内に相続放棄、及び限定承認の手続きをします。また、遺言書の有無を確認し、相続人と相続財産を確定させて、遺産分割協議を行います。ここで話がまとまらない場合には、各相続人が家庭裁判所に遺産分割調停の申し立てをすることができます。
3. 確定申告をすでにしていた方は、4ヵ月以内に所得税の準確定申告を行います。
4. 資産の合計が控除額を超え、相続税がかかる方は、10ヵ月以内に相続税の申告手続きと納付を行います。相続財産の名義変更手続きも済ませましょう。
ざっと見ただけでも、これだけの手順を期限内に踏まなければなりません。また、遺言書の有無によって手続きの流れがまったく変わってきますので注意が必要です。
後編では、法定相続人の範囲と順位、遺言書と遺産相続順位の関係、遺産に土地や不動産が含まれていた場合の分割方法などについて解説します。