故人となったご主人は、一家の大黒柱として、国鉄を定年まで勤め上げた方。こうと決めたら曲げない性格で責任感が強く、奥様から見ても「真面目に仕事と向き合い、手を抜かない」という方でした。
ご主人の二人の娘様は、昇任試験のために、夜遅くまで勉強する姿が印象に残っているそうです。
そんなご主人が仕事と同じように打ち込んでいたのが、競馬でした。奥様とはデートで、娘様たちが生まれてからは、家族みんなで競馬場へ。
葬儀の打ち合わせの席でご長女は、葬儀を担当するエンディングプランナーの長谷川綾に、「大切な思い出がたくさんある場所なんです」と教えてくれました。
「お父さんは入院しているときも、テレビの競馬中継を見ていると、競馬のジョッキーみたいに、体を揺らすんですよ」と、ご次女は思い出し笑いをこらえながら切り出すと、3人はご主人と競馬の話で盛り上がりました。
「お葬式がこんなに楽しみに思えるなんて」
打ち合わせを終えた後、帰り支度をしている長谷川に、ご長女はそう笑顔で話しかけました。
葬儀の日を迎え、式場には競馬場をデザインした花祭壇が参列者を迎えました。白い菊で作り上げた競馬場のコースを、プレートで作ったジョッキーが駆け抜ける花祭壇。祭壇のわきには、思い出の写真やご主人ゆかりの品を展示した思い出コーナーが。
晩年に認知症を患ったご主人ですが、思い出の写真やご主人ゆかりの品を見ながら、仕事も趣味も全力だったご主人を語り合う式場は、あたたかい雰囲気に包まれていました。