子供たちの元気な声があふれる保育園を作りたい。旅立たれたお母様がそう決意し、自宅を保育園に改築したのは55歳のときでした。
たくさん笑って、たくさん泣いて。たくさん遊んで、たくさんケンカして。お母様の保育園には、園児だけでなく、息子様を通わせていた長女様や、保育士として勤めていた次女様にとっても、たくさんの思い出がつまっていました。
「園で子供たちをいっぱい送りだしてきたお母さんを、みんなで見送ってあげようよ」
葬儀を担当するエンディングプランナー・平川雅彦との打ち合わせで、長女様は次女様にそう提案しました。
翌日から、卒園生に声をかけ、お母様の「卒園式」に向けて、準備を始めました。平川は、自宅を改装した保育園から、ピンクの棚や小さな椅子、看板を借りて、式場内に保育園を作り上げました。
式場には、卒園者が写るたくさんの写真を飾りつけ、自宅に眠っていた卒園の文集も用意。中学生や高校生になった卒園生や、その両親、お母様とご縁のあった方々で、思い出を振り返る時間は瞬く間に過ぎていきました。
卒園式は、ついに園歌を残すだけ。ご家族や卒園生の歌声につつまれて、お母様がお休みになる柩は、ゆっくりと式場を後にしました。