家族葬のお布施の相場は? 渡すタイミングや基本的なマナー|仏教、神道、キリスト教のお礼の違いも解説

菩提寺とお付き合いのある人が、住職にお布施の金額を尋ねたとき、「お気持ちで結構です」とあいまいに返答されることがあります。お布施は地域や宗派、寺院の格式、お寺との付き合いによっても金額が異なるため、葬儀のとき喪主を悩ませることが多いようです。そこで、最新のお布施の相場から基本的なマナーまでご紹介いたします。

第一章 お布施とは?

お布施は、通夜、葬儀式などの法要や戒名をいただいた僧侶に渡すお礼です。
本来、僧侶が法要を営むのは利益を得るためではなく、正しい仏法の教えを説くことで施しを行うことが目的です。
そのため、僧侶へのお礼は「読経料」「戒名料」ではなく、仏教の教えへの感謝を表す意味で「お布施」とします。
お布施の金額は、はっきりした決まりがなく、渡す側の“常識”で判断しなければなりません。
また、普段の菩提寺や僧侶とのお付き合い、地域の慣習、宗派など、様々な要因で金額が変わります。喪家にとっては悩みどころです。
次章からはなかなか人に聞けないお布施の相場、僧侶へ渡すタイミング、お布施の基本的なマナー、さらに神式やキリスト教式の葬儀のお礼についても紹介します。

第二章 家族葬のお布施の相場

前章でも述べたように、お布施の金額は地域や宗派、寺院とのつながりの深さ、僧侶の考え方などによって大きく異なります。
たとえば、先祖代々のお墓のある菩提寺にお願いする場合と、葬儀社から葬儀の読経をあげてくれる僧侶を紹介してもらう場合とでは、お布施の金額は異なります。
通夜、葬儀・告別式を2日間営む家族葬儀と、1日で葬儀と告別式を行う一日家族葬儀とでは、僧侶を招く日数も読経の回数も異なるため、お布施の金額も違ってきます。
一般財団法人日本消費者協会の第12回「葬儀についてのアンケート調査」(令和4年3月発行)によれば、
寺院等へのお布施や謝礼の平均は42万5千円となっています。
寺院等へのお布施や謝礼には、「読経料」「戒名のお礼」「御車料(僧侶の交通費)」「御膳料(僧侶の食事代)」が含まれます。また、戒名(法名)の違いによってもお布施の金額は変わります。
一般財団法人 日本消費者協会 第12回「葬儀についてのアンケート調査」(令和4年3月発行)報告書より
生活葬祭センター

お布施の金額が相場より多い・少ないときに考慮する点

お布施の金額があまりに高額では家計の負担になりますし、逆に少なすぎれば社会常識を疑われて恥をかくのではないかと不安になることもあります。
先祖代々のお墓がある菩提寺の僧侶を呼ぶ際は、お布施の金額を家族に相談することをお勧めします。
それでも分からないときは、菩提寺に連絡して僧侶の意向を直接確認してみましょう。
以前は「お気持ちで結構です」と言われることも多かったようですが、現在では具体的な金額を教えてくれる寺院がほとんどです。
自分で菩提寺に尋ねるのがはばかられる場合は、葬儀社に相談するのも良い方法です。
お布施の金額が少ないと僧侶から指摘されることは滅多にありませんが、万が一足りないと言われた場合は、追加でお金を包む必要があります。
また、寺院には「総本山」「大本山」「本山」「本寺」「中本寺」「直末寺」「末寺」といった「寺格(じかく)」と呼ばれるランクがあり、寺格が高ければ高いほどお布施の金額も高額になります。
もし先祖代々の菩提寺の寺格が高すぎて現在の家計状況に合わない場合は、お寺を変える「離檀(りだん)」を検討することも選択肢の一つです。

第三章 家族葬のお布施の内訳

お布施は、通夜や葬儀式の読経や受戒(じゅかい)などに対する僧侶へのお礼です。
お布施以外にも、僧侶の交通費である「御車代」、僧侶のお食事代として「御膳料」を渡す場合もありますので、知っておくとよいでしょう。

お布施(読経のお礼)

仏式の葬儀では、亡くなった方にお経を読むことで仏の悟りを得させ、戒名を授けて引導を渡し、成仏させるとされています。
通夜や葬儀式の読経時間は宗派や僧侶の考え方によっても異なりますが、通常は30~40分程度です。

お布施(受戒のお礼)

戒名は、仏教に帰依(きえ)した者に与えられる仏の弟子としての名前です。
「戒名」と呼ぶのは天台宗、真言宗、曹洞宗、臨済宗、浄土宗で、浄土真宗では「法名」、日蓮宗では「法号」と呼ばれます。
本来、戒名は生前に授かるものでしたが、現在では亡くなった後に菩提寺の僧侶から受戒していただくのが一般的です。
戒名は「院号」「道号」「法号」「位号」から成り立っており、宗派によって特徴があります。
例えば、浄土宗は「誉」、真言宗では梵字、日蓮宗は「日」「妙」、浄土真宗では男性に「釋」、女性に「釋尼」がつきます。
戒名は文字数が多いほど位が高いとされ、中でも「院号」のついた戒名は、寺院への貢献が高かった方に与えられる最上位の称号とされています。
受戒のお礼の相場としては、
通常の「信士・信女」の受戒のお礼:5万円~
高位の「院居士・院大姉」の受戒のお礼:40万円~
相場と比べてあまりにも高額なお礼を要求された場合は、戒名の位にふさわしい金額かどうかを葬儀社の担当者に相談することをお勧めします。

御車代(交通費)

僧侶に式場まで足を運んでいただいた場合は、お布施とは別に交通費として「御車代」を包みます。
御車代の相場は、お寺と式場の距離にもよりますが、5千円~1万円が一般的です。
菩提寺が遠方にある場合は、移動距離や交通手段などを考慮して金額を決めましょう。

御膳料(食事代)

葬儀では通夜振る舞いや精進落としの席を設けますが、僧侶が食事の席を辞退された場合は、お食事代として「御膳料」をお布施とは別に包みます。
葬儀における御膳料の相場は5千円~1万円です。

第四章 【地域別】家族葬のお布施の相場

葬儀社に支払う葬儀費用は、一般的な葬儀と家族葬とでは金額が異なります。
しかし、僧侶に直接渡すお布施については、一般的な葬儀と家族葬では大きく変わりません。
ただし、通夜、葬儀式のある「二日家族葬」と、葬儀と告別式を1日で行う「一日家族葬」とでは、僧侶が式場に足を運ぶ日数や読経の回数が変わるので、お布施の金額が下がることもあります。
お布施の相場は地域によっても異なります。お住まいの地域のお布施の相場について知りたいときは、葬儀社に相談することをお勧めします。

【地域別】 寺院等へのお布施やお礼

東北地方
通夜・葬儀のお布施 約30,000円〜70,000円
戒名料 約50,000円〜200,000円
関東地方
通夜・葬儀のお布施 約50,000円〜100,000円
戒名料 約100,000円〜300,000円
中部地方
通夜・葬儀のお布施 約40,000円〜80,000円
戒名料 約70,000円〜250,000円
近畿地方
通夜・葬儀のお布施 約50,000円〜100,000円
戒名料 約100,000円〜300,000円
中国・四国地方
通夜・葬儀のお布施 約30,000円〜80,000円
戒名料 約50,000円〜200,000円
九州地方
通夜・葬儀のお布施 約40,000円〜90,000円
戒名料 約80,000円〜250,000円
北海道
通夜・葬儀のお布施 約30,000円〜70,000円
戒名料 約50,000円〜200,000円
沖縄
通夜・葬儀のお布施 約30,000円〜70,000円
戒名料 約50,000円〜200,000円

これらの相場は参考値であり、実際の金額は各地域の習慣や寺院の方針により変わることがあります。具体的な金額については、地域の葬儀社や直接菩提寺に相談することをお勧めします。

第五章 【宗教別】寺院、神社、教会のお礼の相場

神式、キリスト教式ともに葬儀の翌日、神社や教会を訪れてお礼を渡します。
但し、仏教用語であるお布施という言葉は使いません。

神社へのお礼

神葬祭では、葬儀の規模によって、斎主、副斎主、斎員、楽員といった神職それぞれにお礼を包みます。
お礼の表書きは「御礼」「御祭祀料」「御神饌料(ごしんせんりょう)」「修祓料(しゅばつりょう)」などです。
お礼の目安は2〜30万円と幅が広く、具体的な金額は神社によって異なります。葬儀社または神社へ相談することをお勧めします。

教会へのお礼

葬儀を終えたら教会へ献金をします。表書きは「献金」です。
これとは別に司祭や牧師、楽器奏者、聖歌隊などへお礼をします。表書きは「御礼」です。
教会ごと、そして牧師ごとに金額が変わるため金額は教会に相談して決めるのがいいでしょう。

第六章 家族葬のお布施に関する基本的なマナー

タイミングや葬儀社に支払う葬儀費用とは違い、お布施は直接僧侶に渡すものです。
それだけに喪主はお布施を渡す作法についてある程度は理解しておきましょう。

お布施を渡すタイミング

承知しました。以下に校閲・編集した文をお送りします。
本来、お布施は葬儀の翌日に喪主がお寺を訪れて、お礼の挨拶を述べて渡すのが正式とされています。
しかし、最近では通夜や葬儀の始まる前、控室で喪主が僧侶に挨拶をする際に渡すことが多くなりました。
お布施を渡すタイミングや作法については、葬儀社の担当者が教えてくれるので、喪主はそれに従いましょう。

お布施の渡し方

お布施は手渡ししないのが作法とされています。
正式には冠婚葬祭などで金封を差し出すときに使う漆塗りの「切手盆(きってぼん)」に置いて渡します。
お布施を包んでおいた「袱紗(ふくさ)」を開いて、袱紗の上にのせるようにして渡しても構いません。
お布施を渡す際は、「このたびは〇〇の葬儀のために足をお運びいただきありがとうございます。これは心ばかりのお布施でございます。どうぞお納めください」などお礼の言葉を述べて渡すのがマナーです。

お布施の表書き

表書きは薄墨ではなく、普通の黒墨で「御布施」と書くか、空白のままにしておきます。
葬儀の表書きは「〇〇家」または「〇〇」と苗字だけを書きますが、法要では施主のフルネームを書きます。
中袋には住所、氏名、電話番号、金額を記載します。
数字は漢数字の旧字体(大字)で「壱」「弐」「参」「四」「伍」「六」「七」「八」「九」「拾」「百」「阡」「萬」。単位は「圓」を使います。
お布施以外に交通費や宴席代を渡すときは、それぞれ別の白い封筒に入れ、表書きを「御車料」「御膳料」としてお布施と一緒に渡します。

お布施の包み方

お布施のお札は半紙で包み、その上から奉書紙(ほうしょし、ほうしょがみ)で包むのが正式とされます。
一般的には市販の御布施袋や白無地の封筒が使われます。
御布施袋は水引の有無、水引の色違いなどさまざまなものが販売されています。
これはお布施の慣習が地域によって異なるからです。
迷ったときは葬儀社の担当者に相談するか、白無地の封筒を選びましょう。
お布施は僧侶へのお礼の財施なので、お札はなるべく新札を使い、向きを揃えて入れましょう。

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