近年、テレビや新聞、雑誌などのマスメディアでたびたび取り上げられている空き家問題
家の所有者が亡くなった後、遺族や親族の適切な管理が行われず放置されたままの空き家は、年々増加し、防災、衛生、景観といった地域環境への悪影響、家屋の倒壊などで近隣住民の安全に深刻な影響を及ぼすことから大きな社会問題になっています。
それは同時に空き家の管理を怠った遺産の相続者に対する近隣住民からの損害賠償請求、都道府県条例に基づく家屋の撤去命令、最悪の場合は行政代執行の全額求償につながります。

こうした現状を鑑みて平成26年(2014年)11月の国会で「空家等対策の推進に関する特別措置法(通称:空家等対策特別措置法)」が成立。適切な管理をしていない空き家の所有者に罰金や固定資産税の増税が課されることになりました。
今回は、終活を考えはじめた住宅の所有者、将来親や親族の住宅を相続する立場にある人なら決して他人事ではない空き家問題の解説。空き家を放置しないめための終活対策について紹介します

今や社会問題!データからみる空き家の戸数と割合

亡くなった人の名義で不動産を売ることはできません。
「空き家」とは、一般的には「誰も住んでいない家」のことをいいます
総務省の調査では、2018年の時点で日本には849千戸の空き家が存在し、総住宅数に占める空き家の割合は13.6%になります。このまま推移すると2033年には2,150万戸まで増えると予測され、空き家率は30.2%になるといわれます。

総住宅数・空き家数・空き家率の推移

適切な管理が行われていない空き家は、家屋の老朽化や自然災害による倒壊、伸び放題の立木や雑草、ゴミの不法投棄による景観の悪化、放火や漏電が原因の火災、害虫や害獣の発生による衛生の悪化など、地域社会に深刻な被害をもたらす可能性があります。

大きな社会問題になっている空き家トラブルを解決するために国は、平成27年(2015年)5月から「空家等対策の推進に関する特別措置法(通称「空家等対策特別措置法」)」を全面施行しました。

「空家等対策特別措置法」では、自治体が空き家の実態に関する調査や所有者への管理指導、空き家の利活用促進などを実施する役割を担います。

この法律が定義する「空家等」とは、「概ね年間を通して居住やその他利用がされていない建築物(住宅に限らない)」を対象としており、以下の状態に1つでも当てはまれば、自治体から「特定空家等*1」の認定を受けることになります。

*1【特定空家等】
(1)倒壊など著しく保安上危険となるおそれがある状態
(2)アスベストの飛散やごみによる異臭の発生など、著しく衛生上有害となるおそれがある状態
(3)適切な管理がされていないことで著しく景観を損なっている状態
(4)その他、立木の枝の越境や棲みついた動物のふん尿などの影響によって、周辺の生活環境を乱している状態

「特定空家等」に認定された空き家の所有者は、自治体から適切に管理をするように助言や指導を受けることになります。それでも改善が見られない場合は勧告や命令を行い、それに所有者が従わなければ、最大50万円以下の過料に処される場合があります(空家法第14条、第16条)。

また、土地や家屋を所有していると、固定資産税や都市計画税などの税金が掛かりますが、自治体から「空家等対策特別措置法」の勧告を受けた「特定空家等」の敷地や必要な管理がなされていない空き家の敷地は固定資産税が高くなります

住宅やマンションなどの居住できる建物の敷地である「住宅用地」には、特例措置が適用されるため、固定資産税の課税標準額は面積200m2以下の部分までの住宅用地(小規模住宅用地)は6分の1、小規模住宅用地以外の住宅用地は3分の1に軽減されます。
しかし、「特定空家等」に認定されたの敷地に特例措置は適用されません

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空き家が増加する背景、その大きな原因とは

総務省が実施している「住宅・土地統計調査」では、空き家を「売却用の住宅」「賃貸用の住宅」「二次的住宅」「その他の住宅」の4種類に分類しています。

このうち「売却用の住宅」、「賃貸用の住宅」の空き家については、売却や賃貸のために管理されていたり、「二次的住宅」は別荘などとして使用されていることが考えられます。
一方、「その他の住宅」に分類される空き家は、長期にわたって人が住んでおらず、管理が不十分のまま放置されている空き家です

「その他の住宅」に分類される空き家が発生する原因としては、居住者の死亡や転居、住宅を相続した者が居住しない、所有者が遠方にいて管理意識が低い、生まれ育った家に愛着があって処分できない、相続を契機に管理責任が不明確になるなどさまざまです。

令和元年 空き家所有者実態調査「人が住まなくなった理由」

特に所有者が高齢の場合、高齢者施設や子供宅などに転居したり、病気で長期入院していても最期は自宅で迎えたいといった希望から、まだまだ居住可能な住宅であるにもかかわらず、いつの間にか空き家になってしまうケースも多く見うけられます。

国土交通省の調査によると、空き家の取得経緯は「相続」が 54.6%と最も多く、次いで「新築・建て替え」が 18.8%「中古の住宅を購入」が 14.0%の順になっています。さらに、空き家問題につながる「その他の住宅」では、「相続」の割合が58.7%にのぼります

令和元年 空き家所有者実態調査「空き家の取得経緯」

親が亡くなったことで住む人が居なくなった実家をどうすればいいか、親の遺志が分からない子供が相続すると、遺産相続や遺品整理などの手続きが山積するなか、自分も日々の仕事に追われ、相談する相手も見つからず、空き家になった実家を「住む」「貸す」「売る」「解体する」か決められないまま放置する結果になります。

原則として相続により不動産を取得した場合、不動産取得税はかかりません。しかし、空き家となってしまった実家が「空家等対策特別措置法」により、自治体から「特定空家等」の認定を受けてしまうと固定資産税に特例措置が適用されず、何倍も高い税金を納め続けることになります

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空き家を含む不動産の管理。みんなどうしている?

近年は地方の過疎地域だけでなく、首都圏でも増加の一途を辿る空き家の問題。1都3県の空き家所有者300名を対象にしたアキサポ空き家総研の意識・実態調査によれば、空き家に対するイメージは、「売却したくてもできない(31.3%)」、「リフォームやリノベーションにお金が掛かる(29.7%)」、「固定資産税が高い(28.3%)」が上位に並び、「お金」に関連するネガティブなイメージが先行していることが分かります。次いで、空き家であるが故に「活用方法が少ない(24.7%)」という意見も一定数存在していることが分かりました。

空き家所有者の空き家に対するイメージ

中でも「売却したくてもできない」の項目は30代が19.0%であるのに対して、60代では36.3%と倍近いポイントとなっており、年代が上がるにつれて「空き家は売りたくても売れないモノ」という認識が強く、こうした考えが結果として空き家問題を生み出す1つの要因になっている可能性があります。

年代別空き家所有者の空き家に対するイメージ
空き家を放置することで発生し得るリスクに関しては、「火災の危険性」に対する意識が23.7%と全体の中では最も高いものの、大多数の空き家所有者は危機感が薄いと言わざるを得ません。
とくに、年代が上がるにつれてその意識が薄まっていく傾向であることがわかります。
空き家を所有している50~60代の年配層が、空き家を放置することにリスクに対して、あまり危機感を持ち合わせていないことも空き家問題の要因の1つになっているのかも知れません。

一方、空き家をすでに「運用」している空き家運用者を対象に、毎月どの程度の賃料を得ているかを尋ねたところ、全体で3割以上となる32.3%が「賃料は得られていない」と回答しています。賃料を得ている人たちの中で最も多く選ばれた回答が「10万円~15万円未満(18.6%)」で、次いで「5万円~10万円未満(15.9%)」という結果でした。

空き家運用で得られている賃料

賃料と地域貢献のどちらを優先したいと思うかを尋ねたところ、 91.9%が「賃料を優先したい」と回答。ほとんど人たちが自身の物件を賃貸として効率的に運用することを希望していることが分かりました

社会問題となっている空き家問題を解決すると同時に、空き家の所有者が利益や収益を得るにはどんな方法があるのでしょうか。

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ぜひ知って欲しい!オススメの「空き家活用法」

「空家等対策特別措置法」の全面施行により、空き家の所有者及び相続人は「住む」「貸す」「売る」「解体する」のいずれかを選択することを迫られることになります。

子供や親族が家を受け継ぎ「住む」のであれば、所有者が存命かつ判断能力のあるうちに相続手続きをすることをお勧めします。ただし、兄弟や親戚など複数人が家を相続する場合、現金のように公平に分けられないので揉めることもあります。

家の「解体」は立地や築年数、木造、鉄骨造、RC造といった構造によって解体費用が変わります。屋内に家財道具が残っている場合、それらの撤去費用も必要です。必ず複数の解体業者から見積もりを取り寄せることが大切です

空き家を「売る」ことも選択肢の1つです。エリアによっては不動産売却で買い手が見つかることもあります。売却価格が相場より低くなりますが、不動産会社に買い取ってもらうこともできます。
ただし、不動産は株式や中古車などと違って流動性が低く、換金までに時間が掛かるのが一般的です。希望価格が折り合わないまま年月だけが経過して、自治体から「特定空家等」の認定を受けてしまうケースもあるので注意が必要です。

空き家の対策でいま最も注目されているのが「貸す」活用法です
ひと昔前まで他人に家を貸すときは、所有者が自ら費用を負担してリフォームやリノベーションを施し、不動産屋などに仲介してもらうことで入居者を探し、貸し出すことが一般的でした。

最新の「空き家活用サービス」は、空き家活用のプロフェッショナルが周辺環境や立地条件など現地調査を行った上でリノベーションおよび活用プランを提案、所有者の自己負担0円でリノベーション工事を行い、賃借人の募集から管理までを行います

空き家の所有者はそこから毎月一定の家賃収入が得られるようになり、契約終了後に自分で物件を使用することも可能です。
このような情報を踏まえ、まずは終活の一環として、

  • 自宅を所有している方は、空き家になることで子供や親族に迷惑を掛けないため
  • 実家や不動産を相続した方は、「特定空家等」の認定を受け、固定資産税が何倍にもなることを避けるため

「空き家活用サービス」にご相談することをお勧めします。

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